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ストーリー考察
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***エンドC [#h9800171] なぜエンドAおよびエンドBではまた獣狩りの夜が始まるのだろうか? 獣の病蔓延の原因は赤い月である。 そしてエンドBで分かる通り、月の魔物が現れる際に赤い月が現れる。 獣の病蔓延の原因はメンシスの儀式と、月の魔物なのだ。 &br; -''青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために'' エンドCでは宮崎氏の言う、2つの意味での青ざめた血を手に入れることができる。 青ざめた血の空と、上位者の血両方だ。 ロマを倒し、儀式の秘匿を暴いた空の色を手に入れ、メンシスの儀式を止めた。 上位者の血を手に入れ、赤子の上位者となった。 &br;しかしながら物語は青ざめた血を手に入れた段階で終わってしまっている。 その点で、「狩りを全うする」の意味は完全に解釈に委ねられている。 本考察では、その解釈を小説『幼年期の終わり』に基づいて行っている。 &br; -''獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない'' 獣の病蔓延の原因であるメンシスの儀式を止め、さらに月の魔物を倒した。 真の意味で悪夢を終わらせ、主人公だけでなくヤーナム自体を夜明けに導いた。
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*ストーリー説明A [#t764cf17] #region(説明A) &color(Red){以下は推測を含む、ストーリーの解釈の一つである。};&color(Blue){''編者:狩人ari'' }; #br -''あらすじ'' 主人公は「狩りを全うするために」、「青ざめた血を求めて」ヤーナムへ来た。 しかし、「狩人の悪夢に囚われて」しまう。 まずはこの悪夢から逃れ、「獣の病蔓延の原因を潰す」必要があるようだ。 こうして主人公はこの2つの目的を求めて、ヤーナムを冒険することになる。 &br; +まず主人公本来の目的があること +その下位の目的・それを達成する手段として、獣狩り・獣の病蔓延の原因潰しがあると考える。 |手記や、人形・ゲールマンのセリフを根拠とする。&br;&br;「忌々しい狩人の悪夢に囚われ、だが逃れたければ…」 ─ 狩人の夢にある手記&br;「君は、ただ、獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう」 ─ ゲールマン&br;「獣を狩り…そして何よりも、あなたの意志のために」 ─ 人形&br;&br;主人公は悪夢に囚われ、それは逃れるべきものである。&br;またセリフは、主人公本来の目的と獣狩りは別物であると示唆している。| #br -''本来の目的とは?'' 本来の目的は「青ざめた血を求め、狩りを全うする」こと。 それ以上でもそれ以下でもなく、%%ヤーナムへ来る前にその意味するところを知っていたかどうかは不明である%%が、([[補足1>#hosoku]]) 以下の考察では、このゲーム(幼年期の始まりエンド)における「青ざめた血を求めよ」「狩りを全うする」が何を指していたのか を説明していきたいと思う。 &br; -''青ざめた血を求めよ'' 青ざめた血は上位者の血であり、月の魔物のこと。(([[青ざめた血]]、宮崎氏へのインタビュー参照)) インタビューにおいて宮崎氏は、青ざめた血は上位者の血であると答え、月の魔物の別名であると続けることから 青ざめた血は、上位者一般ではなく月の魔物の血である可能性が高い。 &br;また、教室棟2Fのメモを基にさらに考えを深めてみよう。 |3本の3本目| |ローレンスたちの月の魔物。「青ざめた血」| |上位者狩り。上位者狩り| |ウィレーム先生は正しい。情けない進化は人の堕落だ| 「幼年期の始まり」エンドでは、''3本の3本目''のへその緒を消費した上で ''月の魔物「青ざめた血」''を''上位者狩り''すると、上位者へと''進化''する。 &br;以上のように教室棟2Fのメモは幼年期エンドのヒント集であると考え、 同エンドで実際に起こっていること、すなわち月の魔物を倒すという点に注目すれば、 「青ざめた血を求めよ」は''「月の魔物の血を求めよ」''と言い換えられるだろう。 &br;月の魔物の血を手に入れること、月の魔物の血の遺志を継承することで、主人公は赤子の上位者へと進化した。 青ざめた血を手に入れ上位者となることが、「狩りを全うするために」必要な条件である。 (&color(Red){加筆:};青ざめた血は、''月の魔物の血''および''変態した主人公の血''と考えることができる。[[上位者の血>青ざめた血#k2ead5a1]]参照。) &br; -''狩りを全うする'' 「狩りを全うする」とは何かを考える前に、エンディング「幼年期の始まり」について理解を深めておきたい。 そして幼年期の始まりを考えるヒントとして、小説『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク著)を紹介させてほしい。 &br; --幼年期の終わり あるときオーバーロードという宇宙人が地球へやって来て、地球人を支配・管理するようになった。 |しかしオーバーロードの真の目的は、オーバーロードが仕える『オーバーマインド』という更なる上位者の意図するところにあった。&br;オーバーマインドは人類を更なる精神的な高みへと誘導し、自らの一部として取り込む事にあった。&br;オーバーロードは彼らの意を受けて人類を破滅から救い、人類が更なる存在へと脱皮する道筋を立てるために地球に派遣されたいわば産婆のようなものであった。&br;人類にその変化のきざしが訪れたとき、人類は過去の世代と断絶し、旧人類は滅亡への道を辿る。&br;旧人類が持つ個としての意識や感情といったものはオーバーマインドとは全く相容れない物だからだ。&br;最期の旧人類が新人類の『幼年期の終わり』を実況する中、オーバーロードは自らの故郷の星へと帰還するところで物語は幕を閉じる。&br;[[アーサー・C・クラーク著 『幼年期の終わり』について>http://blogs.yahoo.co.jp/cicerostop/13699675.html]]| &br; --''幼年期の始まり'' 同著をもじったものが本作のエンディングの一つ「幼年期の始まり」であるとすると 幼年期の始まりとは、主人公の上位者化、新人類世代の始まりであり、旧人類世代の滅亡を意味する。 これに、トロフィーの説明文も加えて考えてみよう。 |『人の進化は、次の幼年期に入ったのだ』 ─ トロフィー「幼年期の始まり」| 人類の進化は、[[ナメクジ>http://bloodborne.swiki.jp/index.php?%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%A0&word=%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%AF%E3%82%B8#cc1dbae7]]のような脊索動物から始まる。((「真珠ナメクジ」、または精霊=「上位者の先触れとして知られる軟体動物」も参照)) そこから単弓類へ、そして最初の哺乳類アデロバシレウス(Adelobasileus; 「おぼろげな王」の意)へと進んだ。 哺乳類のうち霊長類は、初期猿人(ヒト亜族)と猿(チンパンジー亜族)とに分かれ、前者は猿人・原人・旧人・新人へと進んできた。 &br;そして今、人類の進化は、ちょうど新人類へと移り変わる瞬間、新人類が生まれた瞬間にある。 新人類の時代の幼年期である。 これが「幼年期の始まり」の意味だと思う。 旧人類の時代の終わりであり、新人類はまだ赤子の段階であるが、これから新人類が台頭していくだろう。 &br; --''狩りを全うする'' ではこの「幼年期の始まり」がどう「狩りを全うする」ことに繋がるのか? 旧人類から新人類への移り変わり、すなわち''獣を持つ旧人類を終わらせる''、それが狩りを全うすることではないだろうか。 上位者の赤子となった主人公は、新たな人類である上位者の時代を築き、旧人類の時代を終わらせる。 旧人類はみな獣である。 肉体的な意味では獣化(beasthood)する点で獣であるし、精神的な意味でも、思考の次元が低く、獣である。((ミコラーシュ「我らの脳に瞳を与え、獣の愚かを克させたまえ」)) 「狩りを全うする」は“獣”狩りを全うする、と言えるだろう。 主人公の獣狩りはまだ続くのだ。 **3つのエンディング [#t2910c50] それぞれのエンディングは平行に並んだ、等価なものではない。 エンドA「ヤーナムの夜明け」、エンドB「遺志を継ぐもの」、エンドC「幼年期の始まり」とすると、A→B→Cの順序があり、 その順に情報を読み取っていく必要がある。 &br;「''青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために''」と「''獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない''」 この目的を示す2つのメッセージは、読み取り方がエンディングで異なる。 言い換えれば、エンドAで読み取ることのできる一次的な意味と、エンドCで読み取ることのできる二次的な意味がある。 ***エンドA [#kfa5f7c0] エンドAでは''今回限りの''獣狩りの夜を終わらせ、主人公だけが夜明けを迎えることになる。 &br; -''青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために'' 宮崎氏によると「青ざめた血」は2つの解釈がある。 一つは青ざめた血の空であり、もう一つが前述した月の魔物である。 エンドAでは前者のみを手に入れたと解釈することができる。 すなわち、ロマを倒し、青ざめた血の空を手に入れた。 秘匿を破り、メンシスの儀式を止めることで今回の獣狩りを終わらせた、 狩りを全うした、というのがこのメッセージのエンドAにおける読み方である。 &br;エンドAにおいては青ざめた血=青ざめた血の空であり、狩り=今夜の獣狩りである。 #br -''獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない'' 作中で示される通り、獣の病蔓延の原因は赤い月であり、それはメンシス学派が呼んでいる。 エンドAでは原因としてメンシスを潰し、主人公の夜は明けた、ということになる。 |赤い月が近づくとき、人[と獣]の境は曖昧となり…| |メンシスの儀式を止めろ。さもなくば、やがて皆獣となる| |狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている&br;秘匿を破るしかない| &br; 今回、主人公は獣狩りの夜を終わらせたが、ヤーナムはもう獣狩りの必要がなくなったのだろうか? その答えはエンドBで明かされる。 ***エンドB [#qc4d3089] エンドBはエンドAの裏面であり、続きである。 介錯を受け入れず、ゲールマンを倒すと、主人公はゲールマンの代わりとなって''また獣狩りの夜が始まる''。((エンドB時の人形台詞)) &br; -''青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために'' エンドA同様、青ざめた血の空を手に入れ、狩りを全うした と思いきや、また獣狩りの夜が始まっている。 「主人公の今夜の狩り」を全うしただけで、言わば「獣狩りそのもの」を全うしてはいないのだ。 その意味で、青ざめた血の空を手に入れただけでは狩りを全うすることはできない、と言えるだろう。 &br;エンドBにおいては、エンドAの青ざめた血=青ざめた血の空、狩り=今夜の獣狩りという 定義が間違っていることが示唆される。 #br -''&color(blue){忌々しい狩人の夢に囚われ};、だが逃れたければ&br;獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない'' エンドAでは獣の病蔓延の原因を潰したように見えるが、実際はどうなのだろうか。 エンドBは、エンドAと同様にメンシスの儀式を止めたはずなのに、''主人公は夢に囚われたまま''である。 獣の病蔓延の原因であるメンシスの儀式を止めたなら、 ゲールマンの介錯を拒んだとしても夢から解放されるのではないだろうか。 その意味で、''獣の病蔓延の原因がメンシスの儀式だけではない''、と言えるのではないだろうか。 これがエンドAの裏ということである。 表向きは獣の病蔓延の原因を潰し、解放されたように見えるが、実は裏を見れば 獣の病蔓延の原因は潰せていないことが分かるのだ。 &br;これは、ゲールマンを倒さなかった場合には、主人公ではなくゲールマンの身に起こる事柄だと推測できる。 つまり、エンドAで主人公が解放された後、その続きでは、ゲールマンはまだ夢から出られず、また獣狩りの夜を迎えるのだ。 エンドAにおける主人公は(乳母を倒した点で優秀ではあるものの)以前の狩人と同様であり、 何度も繰り返される獣狩りの夜の一つを担っただけ、獣狩りのサイクルの一つを担っただけである。 獣狩りは終わらず、次の狩人に託される。 獣狩りのサイクルは、…前々回、前回、今回の獣狩り、次回、次々回…と続いていくだろう。 &br; エンドA/Bでは青ざめた血を半分しか回収しきれておらず、狩りを全うできていない。 獣の病蔓延の原因を半分しか潰せておらず、獣狩りの夜はまた起こる。 ゲールマンが「全て長い夜の夢だったよ…」と言う通り、夜はずっと続いている。 これがエンドBの読み取り方ではないだろうか。 ***エンドC [#h9800171] なぜエンドAおよびエンドBではまた獣狩りの夜が始まるのだろうか? 獣の病蔓延の原因は赤い月である。 そしてエンドBで分かる通り、月の魔物が現れる際に赤い月が現れる。 獣の病蔓延の原因はメンシスの儀式と、月の魔物なのだ。 &br; -''青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために'' エンドCでは宮崎氏の言う、2つの意味での青ざめた血を手に入れることができる。 青ざめた血の空と、上位者の血両方だ。 ロマを倒し、儀式の秘匿を暴いた空の色を手に入れ、メンシスの儀式を止めた。 上位者の血を手に入れ、赤子の上位者となった。 &br;しかしながら物語は青ざめた血を手に入れた段階で終わってしまっている。 その点で、「狩りを全うする」の意味は完全に解釈に委ねられている。 本考察では、その解釈を小説『幼年期の終わり』に基づいて行っている。 &br; -''獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない'' 獣の病蔓延の原因であるメンシスの儀式を止め、さらに月の魔物を倒した。 真の意味で悪夢を終わらせ、主人公だけでなくヤーナム自体を夜明けに導いた。 ***HUNTED NIGHTMARE [#cca479f5] HUNTED NIGHTMAREの読み取り方、 そして悪夢とは何を指すのか、を考えていきたい。 #br -''場所としての悪夢'' 件のメッセージの読み取り方は2つある。 1つの読み方としては、メンシスの悪夢や狩人の夢を形作った上位者を倒したということ。 上位者を倒し、夢を制圧した、と考えれば良いだろうか。 &br;しかしながら、この解釈では「悪夢を狩った」と言えるのだろうか。 場所を狩った、という言い方は少し苦しいのではないか。 上位者を倒したことで「悪夢を狩った」と表示されるシーンを見て、 なんで上位者を狩ったのに悪夢を狩ったことになるんだ、とギャップを感じたのではないか。 &br;そのギャップを埋める考え方として、以下のものを提案したい。 上位者を狩ることで何らかの悪夢が消え去った、ということが 「悪夢を狩った」と比喩されているのだと。 #br -''比喩としての悪夢'' さて、比喩としての悪夢とはどういうことか。 [[宮崎インタビューまとめ]]で「夜のヤーナムは、(省略)まさに悪夢のような世界ですが」と宮崎Dが答えているように ヤーナムの、あの世界観そのものが悪夢ではないだろうか。 獣にまみれ、血に塗れた世界はまさに悪夢である。 &br;世界を悪夢的たらしめている獣狩りの夜。 そして、その獣狩りの夜を生んだ原因の2人の上位者。 その上位者を倒すことで、獣狩りの夜という悪夢的な世界が終わる。 よってHUNTED NIGHTMAREが表示されるのだ。 #br ''悪夢=獣狩りの夜=その原因の上位者たち''を狩った。 これが悪夢の意味、HUNTED NIGHTMAREの読み取り方であると考えたい。 ***まとめ [#w5483d22] エンドAでは獣の病蔓延の原因、メルゴーの泣き声を止めることで悪夢を終わらせた。 エンドBでは悪夢の原因はメルゴーだけでなく、別のものがあることを示唆される。 エンドCでは悪夢の原因であるメルゴーと月の魔物両方をきちんと止め、悪夢を終わらせた。 #br 以上のように、それぞれのエンディングは描写される内容が連続的であり それぞれを並列に見るのではなく、ひとまとまりの物語として読むことができる。 エンドA、エンドB、エンドCと見るのではなく、はじまりからエンドCまでがブラッドボーンの物語だ。 **説Aに対する反論・補足 [#hosoku] 反論:エンドAでは解放されているのに、エンドBでは解放されていないという解釈は矛盾があるのでは? 回答:エンドAとエンドBはそれぞれ別の物語であると考えます。 #br ブラッドボーンA、ブラッドボーンB、ブラッドボーンCのようにそれぞれの物語があり、 それぞれにおいて「青ざめた血」の定義が異なった上で、一貫性があります。 #br -''認識による存在の決定'' 認識されるかどうかによって事物の存在の有無が決まる、という考え方がデモンズソウルでは採用されています。 以下はデモンズソウルのネタバレになりますが、 デモンズソウルにおいて、ソウルとは世界を認識する力であり、ソウルが失われると思考が失われます。 そして、世界からソウルが失われると、認識される対象である世界も消失してしまいます。 この認識論は普遍性があると思いますし、 それが宮崎氏の中にあり、ブラッドボーンにおいても顔を出していると考え、今回のエンディング解釈に採用します。 #br 同氏は[[インタビュー>宮崎インタビューまとめ#w35d162e]]において、「青ざめた血を求めよ」とはメンシスの儀式を止めることを意味すると答えています。 ここにおいて、「獣の病蔓延の原因を潰せ」「青ざめた血を求めよ」という2つの目的は 全て青ざめた血の空関連一つで説明され、月の魔物は全く関わってきていません。 エンドAで終わる物語は、青ざめた血の空の物語であり、それで完結しています。 月の魔物は認識されておらず、先のような認識論にのっとれば ブラッドボーンAには月の魔物は存在しないということになります。 そのため主人公は何の問題もなく夜明けを迎えられることができました。 #br これに対して、エンドBでは月の魔物が登場します。 この点によって、エンドAとの差異が生まれることになります。 月の魔物は認識され、主人公は囚われることとなりました。 #br -''啓蒙の多寡による説明'' ブラッドボーンにおいて、世界を認識する力は啓蒙として表現されています。 その点に着目すれば、主人公の啓蒙はA<B<Cの順に高くあると言えるでしょう。 それぞれの物語で主人公が認識する世界の量は増えているからです。 逆説的になりますが、啓蒙の多寡があったからこそ それぞれのエンディングに分岐したと考えることもできます。 &br;物語Aの主人公は、啓蒙を多く得られず、青ざめた血の意味を一義にしか認識できなかった。 物語Bの主人公は、啓蒙をある程度得たが、青ざめた血が空以外も指していることに気づく程度だった。 物語Cの主人公は、十分に啓蒙を得て、青ざめた血の意味を完全に認識していた。 #br ''補足1. 「青ざめた血」の意味を走り書きを残した時点で知っていたかどうか。'' 知らなかったと考えるべきなようだ。 OPで輸血を受ける前に青ざめた血について聞いており、その様子からはほぼ無知であるように思える。 #br コメントにて 「主人公が青ざめた血の空や上位者の血という意味で青ざめた血と書いたとは思えない。輸血爺に尋ねるはずがない」 というものがあった。 答えとしては 「主人公は知らずに青ざめた血と書いた」「結果的に青ざめた血の意味は~だった」となる。 意味を知らないから、その意味にならない、ということにはならない。 #br 結論から言えば、ブラッドボーンをプレイしているプレイヤー視点での発想をここでは取り扱っている。 主人公が知っていたかどうかというインゲーム的発想は取り扱わない。 なぜかというと、考察の骨子となるインタビューで宮崎がプレイヤー視点での解釈の仕方を述べているからである。 件の公式メッセージはプレイヤーが読み取るものであり、どう読み取るべきだったか、をインタビューにて答えている。 必然的に考察対象はプレイヤーの読解視点にならざるをえない。 #br あえてインゲームで考察を止めるなら、「主人公以外の誰かが青ざめた血という単語だけを伝えた」ということになるだろう。 伝達者自体も意味を知っていたかどうかは不確かである。 ビルゲンワース関係者の誰かが青ざめた血というワードを作り、それが巡り巡って主人公に伝わった。 #endregion #br *ストーリー説明B [#d4a0de6f] #region(説明B) -''前置き'' まず前提として、Bloodborneの主人公には自由意志が存在している。 そして、プレイヤーはその主人公として目を覚ましたあと、どこへ行くかは自由だ。 ゲームシステム的な制限はあるが、最初に倒すボスも人それぞれだ。 エンディングを迎えると、主人公は最終的に獣狩りの夜を終わらせることになる。 プレイヤーによっては、テキストを読まずに気づいたらエンディング、ということにもなりえるが、ゲーム内での主人公の目的は二つ明示されている。 #br 「青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために」とは、主人公がおそらく手術を受ける前に、自筆で書いた走り書きだ。 それはゲーム開始直後に見つけることができる。 これを目的Aとする。 「獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない」とは、狩人の夢で見られる手記だ。 これは目的Bとする。 #br 主人公はさらに、狩人の夢でゲールマンから話を聞くことができる。 '''「今は何も分からないだろうが、難しく考えることはない&br;君は、ただ、獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう&br;狩人とはそういうものだよ。直に慣れる…」''' ゲールマンの言う通り、ただ道行くままに獣を狩り続けていれば、エンディングにたどり着くことができる。 だが、それでは「目的」が何であったのかは分からない。 そこで考察をしよう。 **2つの目的と青ざめた血 [#c2200461] -''目的Aについて、その1'' 目的Aは、記憶を失う前に主人公が書いたメモで、恐らくゲーム開始時にはその意味を思い出すことができない。 プレイヤーももちろん、意味が理解できない。 しかし、ゲーム中で「青ざめた血」という言葉は何度か出てくる。 このwikiにも、キーワード「青ざめた血」として纏められているので、詳しくはそこを参照してほしい。 「青ざめた血」というのは、上位者の血を指す言葉でもあり、月の魔物を指す言葉でもある。 宮崎氏によれば、それを求めることはメンシスの儀式を止めることでもあるらしい。 だが、それは目的Bでも成さねばならないことである。 #br -''目的Bについて、その1'' 目的Bは、比較的理解しやすい。 「獣狩りの夜」とは、獣の病が蔓延する夜のことであり、蔓延させている原因を解決すれば、夜が明ける。と読み取れる。 では、病を蔓延させている原因とはいったい何なのだろうか。 #br それはゲーム内の手記などから読み取れる。 '''「赤い月は近く、この街は獣ばかりだ。きりがない もう何もかも手遅れ、すべてを焼くしかないのか」''' これは旧市街で見つかるメモである。 '''「獣狩りの夜、聖堂街への大橋は封鎖された 医療教会は俺たちを見捨てるつもりだ あの月の夜、旧市街を焼き棄てたように」''' この手記はヤーナム市街で見つかる。 旧市街は以前起きた、凄惨な獣狩りの夜に、医療教会によって焼かれたらしい。 そして、赤い月が近づいたのが、街ごと焼かざるを得ないほど、獣の病が蔓延した原因のようだ。 '''「赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん」''' さらに、こんな手記もある。 ここから、赤い月が近づくと、%%%人の境が曖昧になる%%%(英語では人と獣の境、と明言されている)、%%%上位者が現れる%%%、%%%赤子を抱く者が出る%%%、という現象が起こることがわかる。 #br では、赤い月はなぜ近づいたのか? 過去、それが起こった原因は不明だが、少なくとも主人公が対峙する、今回の獣狩りの夜に関しては、手記がある。 '''「狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている 秘匿を破るしかない」&br;「メンシスの儀式を止めろ。さもなくば、やがて皆獣となる」''' メンシスという人たちが儀式を行っており、それが赤い月を呼んでいるらしい。 儀式を止めるためには、「悪夢の儀式は赤子と共にある 赤子を探せ。あの泣き声を止めてくれ」という手記があるように、 赤子、その泣き声を止めれば良いらしい。 ここで一度目的Bについて整理すると、獣狩りの夜を明けさせるために、メンシスの儀式を止めればいいようだ。 #br -''目的Aについて、その2'' 目的Aは、目的Bのその先にあるように感じられる。 青ざめた血を求めることが、狩りを全うすることに必要だ、ということであれば、 「青ざめた血を求める」ことは「儀式を止めること」でもあり、その先に目的Aの真意があるようだ。 #br ここで、エンディングについて見てみよう。全部で3種類ある。 いずれも儀式を止めたあと、狩人の夢でゲールマンと対面することにより発生する。 流れはこうだ。 獣の病蔓延の原因である、赤い月を呼んでいた、メンシスの儀式を止めたことによって、今回の獣狩りの夜は明けるようだ。 ゲールマンは主人公に、自分の介錯を受け入れ、夢から解放されるといい、と提言する。 そして、選択肢が現れる。 「介錯に身を任せる」 「任せない」 #br %%%ヤーナムの夜明け%%% 「介錯に身を任せる」を選んだ主人公は、ゲールマンに首をはねられ、狩人の夢で死ぬ。そして、ヤーナムの夜明けと共に目を覚ました。 これを選んだプレイヤーの思いも様々であろう。夢とはいえ、主人公が首を撥ねられることを選択するのだから。しかし、そのあたりはプレイヤー次第である。 これは目的Bの達成であるといえよう。 #br %%%遺志を継ぐもの%%% 「任せない」を選んだ主人公を、ゲールマンは「君も何かにのまれたか」と判断し、主人公へと襲い掛かる。 ゲールマンを倒した主人公は、狩人の夢に出た赤い月を見る。 そこから上位者と思われる異形の者が降りてきて、主人公を抱擁する。そして、新たな獣狩りの夜、主人公は人形が押す車椅子に揺られていた。 「また、獣狩りの夜が始まりますね」人形に声をかけられた主人公は、あのゲールマンのようだった。 #br 一見バッドエンドだが、ここでも目的Bの達成条件は満たしており、今回の獣狩りの夜は明けた、と考える。 獣狩りの夜は何度も起こるものであり、主人公はゲールマンの役割を、遺志を受け継いだのだ。 プレイヤーによっては、ゲールマンが夢から解放されたがっていることを知っているだろう。 主人公は、その意思をくみ取り、ゲールマンを解放したのかもしれない。そのあたりはプレイヤー次第である。 ラストで始まった獣狩りの夜で、新しい狩人の導き手となるのだろう。 #br %%%幼年期のはじまり%%% 「任せない」を選んだうえ、「三本目のへその緒」というアイテムを三つ以上使っている場合に、このエンディングになる。 このエンディングにたどりついたプレイヤーは、偶然そのアイテムを使ったかもしれないし、教室棟にある手記を読んだのかもしれない。 ただ、やはりそのあたりはプレイヤー次第なのだ。 ゲールマンとの戦闘後、月の魔物に抱擁されるかと思ったその時、魔物は何かに気づいたように主人公を離し、襲い掛かってくる。 そしてそれを倒すと、人形が狩人の夢に転がっている上位者の赤子のようなものを拾い上げ、「狩人様」と声をかける。 #br これも目的Bは達成している。しかし、ほかの二つとは大きく違うところがある。 このエンディングで主人公は、目的Aの達成条件も満たしたのだ。それについては後述する。 #br -''目的Bについて、その2'' この目的は、主人公(プレイヤーという意味ではない)自身の目的ではないように思える。 これはつまり、獣狩りの夜というサイクルのたびに、狩人の夢に依る狩人が成すべき目的である。 狩人の夢に、それが書いてあるという事実も、その裏付けである。 #br メンシスの儀式により、赤い月が現れた。⇒赤い月が近づくと、獣の病が蔓延する。⇒儀式を止めるには、赤子の泣き声を止める必要がある⇒メルゴーの乳母という上位者が、赤子を守護していたので、それを倒す。 これが目的B達成条件を満たすためのあらすじだろう。 メルゴーの乳母や、赤子、トゥメルの女王ヤーナムについては、ここでは考察しない。あくまで、おおまかなストーリー全体の考察を行うためである。 とにかく、夢に依る狩人としての目的はこれで達成できる。 しかし、目的Aの文章からするに、それは「狩りを全うする」ことと同じではないらしい。 儀式を止めるのは、その手段なのである。 #br -''目的Aについて、その3'' 「青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために」。 いま、ここまで流れを見てきたうえで、もう一度この文章について考えてみよう。 #br 「見たまえ!青ざめた血の空だ!」という手記があるように、 赤い月が近づいている時、空は青ざめた血のような色をしている。これも言葉の意味の一つであるらしい。 ゲーム開始時には、空に赤い月は出ていないように見えるが、 それは白痴のロマが儀式を秘匿していたからであり、まずそれを暴く必要がある。 そして、最後に儀式を止める。 しかし、それだけでは「狩りの全う」にはならないのだ。 #br 一体、「狩りの全う」とは何を意味するのか?いままで獣狩りの夜を戦ってきた狩人たちは、誰もそれを成しえていなかった。 しかし、幼年期のはじまりENDで、主人公は狩りを全うしたと考えられる。 その根拠はどこにあるのかを論じるために、そもそもこの世界において「狩り」とは何なのかを考え、結論へいこう。 **狩りの全うと上位者 [#rdd915db] -''「狩り」と「獣」'' Bloodborneにおいて、たびたび「人間は獣である」、というメッセージが語られる。 設定から、獣性と呼ぶのが適当であろう。人は皆、獣性を持っている。 人のうちにある獣、それが何かの拍子で表に出てくる。それが「獣の病」なのだ。 とりわけヤーナムの血の医療や、それに準ずる行動が、それを助長するようであるが、 この世界の人間は、誰しもが獣になる可能性を秘めている。 その根本的な部分を解決しないと、獣性は永遠に人から消えない。 いくら狩人が戦っても、新しい獣が生まれる。 狩人もまた、獣になる。 そもそも血の医療はそれを助長しただけであって、病の原因ではない。 原因は、人が人であることなのだ。 そう、仕掛け武器では「獣」を本当に狩ることはできないのだ。 #br -''本当の「狩り」'' 主人公は、青ざめた血を求めて、狩りを全うしようとしている。本当の意味での「狩り」を。 輸血を受ける前の主人公がどういう人物だったのか? それはプレイヤーが各々考えることだが、主人公は獣を狩るためにやってきた。 #br 赤い月が出ている時に、現れるものがある。 上位者だ。 上位者は、人には理解できない智慧を持っている。ステータス的には、それを主人公が得ると啓蒙として増えていく。 啓蒙が増えると、ステータスの獣性が減る。上位者の智慧は、獣性と相容れないものらしい。 では、上位者には、獣性がないのではないか。 基本的に、上位者は積極的に主人公に襲い掛かったりはしないように見える。獣のボスとは明らかに様子が違う。 白痴のロマが、瞳を授かる前にどんな風だったかは分からないが、 白痴であるということが、獣性の有無にかかわっていたのではないだろうか。 だから瞳を授かり、上位者になれた。広義でいえば、上位者とは白痴なのではないか? 上位者は、人間とは明らかに違う考え方を持っており、その動きも緩慢に感じる。獣性は感じられない。 ウィレームはそこに憧れたのでは?彼に象徴する目を覆うような装飾は、とても禁欲的に感じる。 自らの獣性を抑えることで、瞳を授かるに足る白痴であろうとしたのでは? 事実、主人公が会うことのできるウィレームは、白痴そのものだ。 そして、元来赤子とは、白痴のようなものではないだろうか。白痴の者は、まるで赤子のように見えないだろうか。あのロマのように。 しかし、白痴のようにみえる赤子には、赤子にしか見えない世界があるのでは?我々人間も、そこに憧れたりしないだろうか。 #br 主人公は三本目のへその緒を使い、上位者の知恵、瞳を授かることにより、上位者たる資質を得た。 幼年期のはじまりENDで、月の魔物は主人公に上位者たる資質を感じた為、戦闘態勢を取ったのではないだろうか。 戦闘に勝利した後、主人公は上位者になる。「青ざめた血」である月の魔物を倒すことは、そのプロセスの終着点なのだ。 #br 「青ざめた血を求めよ、狩りを全うするために。」とは、すなわち、 「上位者になれ。人から獣を消すために」。という意味ではないだろうか。 主人公が上位者になったことで、どんな影響が出るのかは分からないが、 上位者に獣性がないのなら、それは希望である。 上位者の赤子となった主人公は、昇華した人類の幼年期のはじまりである。 **仮説 [#s444d4ba] 説Bは、Bloodborneのストーリー、その全体像を大まかに考察したものである。そこに記したものについて、さらに見解を深めた考察を、補足としてここに記す。 あくまでもこれは仮説であり、さらなる考察の発展の糧となればと思い、書くものである。 #br -''赤い月と上位者'' Bloodborneには、「夢」という概念がある。それは現実世界とは別の、一つの世界のようである。上位者や、メンシス学派がそれを生み出すことに成功した。 以降、「世界」という言葉を使うが、それは「夢」も含むとして考えてほしい。 #br では、赤い月と共に上位者が現れる、というのを前提として話を進める。 |赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり&br;偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん|ビルゲンワースの手記| 上位者がその世界に現れる時、そこには赤い月という「物体」が現れている。 赤い月と上位者は、相互に関係している。 しかし、上位者が存在している世界に赤い月が存在していないことがある。メンシスの悪夢では、月は白く輝いているのにも関わらず、メルゴーと、メルゴーの乳母の二つの上位者が存在している。また、ほかにも例外が見られるが、それについても後述する。 #br -''位置関係'' 赤い月とは物体であり、隠したり、移動したりすることのできる球体であると考える。 上位者が現れたとき、その世界には確かに赤い月が現れているはずだ。白痴のロマを倒すまで、ヤーナムの街に赤い月は出ていない。月前の湖に隠されていたのだ。主人公がロマを倒し、赤い月は元の位置へ戻った時、ようやくヤーナムの空にそれが現れる。その月は、メルゴーに関係する赤い月であると思われる。 |悪夢の儀式は赤子と共にある&br;赤子を探せ。あの泣き声を止めてくれ|隠し街ヤハグルの手記| それは月前の湖でその母、ヤーナムの女王が現れ、赤子の泣き声がすることからも想像に難くない。しかし、メルゴーはメンシスの悪夢にいる。つまり、初め上位者が出現するときには、その近くに赤い月が現れるのであろうが、その後上位者が他の位置へ移動したとしても、赤い月はその場にあり、さらにロマのように赤い月を移動させることもできるのだ。二つの存在の位置関係は、必ずしも同じ場所に存在する必要のないものであるのだ。 #br -''上位者と、偉大なる上位者'' |赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり&br;偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん|ビルゲンワースの手記| このテキストには、「偉大なる上位者」という記述がある。それは普通の上位者と区別して考えるものとする。では、誰がどちらなのか。 本編において、上位者である、とされている存在を挙げてみよう。 アメンドーズ、白痴の蜘蛛ロマ、星界からの使者、星の娘エーブリエタース、メルゴーの乳母、月の魔物、メルゴー、姿なきオドン、ゴース(ゴスム) さらに、これらの中で、「眷属」という属性をもった存在がいる。 白痴の蜘蛛ロマ、星界からの使者、星の娘エーブリエタース これらは上位者の眷属であり、「偉大なる上位者」ではないと考える。事実、赤い月に呼応して現れたという描写はない。「偉大なる上位者」はそれらを除いた者たち、 アメンドーズ、メルゴーの乳母、月の魔物、メルゴー、姿なきオドン、ゴース(ゴスム) であるとする。この偉大なる上位者は、赤い月による現れる可能性のある存在である。 #br -''メンシスの儀式'' |狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている&br;秘匿を破るしかない|隠し街ヤハグルの手記| |ああ、ゴース、あるいはゴスム&br;我らの祈りが聞こえぬか&br;白痴のロマにそうしたように、我らに瞳を授けたまえ|ミコラーシュ| メンシス学派は、赤い月を呼び、ゴース(ゴスム)のような強い力を持った上位者を召喚することで、その存在から瞳を授かろうとしていた。そのために行ったのが、メンシスの儀式である。だが、メンシスの儀式で現れた上位者は、女王ヤーナムの子、メルゴーである。 |全ての上位者は赤子を失い、そして求めている&br;故にこれはメルゴーとの邂逅をもたらし&br;それがメンシスに、出来損ないの脳みそを与えたのだ|三本目のへその緒(メルゴーの乳母)| そのメルゴーを奪いに、あるいは守りに、偉大なる上位者、メルゴーの乳母が現れた。ミコラーシュ達、メンシスの学徒の遺体がミイラ化していることから、彼らがメンシスの悪夢を作ってからは相当な時間が経っていると思われる。元々彼らが意図的にメルゴーを呼び、その後さらにそれを餌として別の上位者を呼ぶ、というところまで考えていたのかは分からないが、今回の獣狩りの夜に、その原因となる儀式は始まった。それはおそらく再誕の広場辺りで行われた。そこに赤い月が現れ、メルゴーが現れたが、メンシスの悪夢へと移された。メルゴーの乳母も、それによってメンシスの悪夢にいるのだ。儀式を行ったのが誰なのか、正確には分からないが、メンシス学派の肉体はミイラになっているし、悪夢でもミコラーシュ以外の学徒は見かけない。トゥメル人の狂った女たち、鐘を鳴らす女が再誕の広場にいることから、彼女らが行ったのかもしれない。そして、彼女たちは赤い月から異形を呼ぶ。再誕者、あれはどういった存在なのだろうか? #br -''再誕者'' 隠し街ヤハグルでは、人を攫ってきて人体実験を行い、人工的な上位者を作ろうとしていた。メルゴーを呼んだあと、儀式を阻止しようとする主人公を止めるため、鐘を鳴らす女たちは、その失敗作を月から呼び出した。赤い月からずるり、と地に落ちてくる再誕者。あの光景から、赤い月にはそういったものを入れておく力、四次元的な力があるのだと考える。赤い月を介して、上位者またはそれに連なる存在は現れるのだ。それは、上位者たちのワープホールのようなものであるともいえる。 #br -''儀式、そして獣狩りの夜の終わり'' 主人公がメルゴーの乳母を倒し、メルゴーも消えた。赤い月と関係する上位者が消えたことで、今回の獣狩りの夜は終わりを迎える。どうやら上位者を倒した瞬間に赤い月が消えるわけではないらしいが、主人公が狩人の夢へ戻ると、獣狩りの夜の終わりを告げられる。 |狩人様。お待ちしておりました&br;間もなく夜明け…夜と夢の終わりですね&br;…大樹の下で、ゲールマン様がお待ちのはずです|人形| さらにそこでは、物語の最後の分岐が待っている。 |…狩人よ、君はよくやった。長い夜は、もう終わる&br;さあ、私の介錯に身を任せたまえ&br;君は死に、そして夢を忘れ、朝に目覚める&br;…解放されるのだ&br;この忌々しい、狩人の悪夢から…|ゲールマン| 「ヤーナムの夜明け」ENDでは、夜は明け、赤い月も消えている。他のエンディングに関してもヤーナムは夜明けを迎えるのであろうが、月の魔物が現れる、「遺志を継ぐ者」END、「幼年期のはじまり」ENDに関してもっと詳しく見ていこう。 #br -''再び現れた赤い月'' 月の魔物は、赤い月から現れた。狩人の夢にいる主人公に用があったので、赤い月をそこに出現させ、それを介してどこからかやってきた、というわけだ。 「遺志を継ぐ者」では主人公をゲールマンの代わりとする目的を果たし、またどこかへ帰っていく。それとともに、狩人の夢から赤い月は消える。「幼年期のはじまり」でも同様に赤い月は消えるはずだ。月の魔物は主人公に倒されたので、ヤーナムの赤い月のように、いずれ消える。しかし、このエンディングでは、最後に上位者が現れる。主人公だ。主人公はその戦いを経て、上位者の赤子になる。しかし、その時赤い月は現れていない。赤い月と上位者はセットではないからだ。 #br -''赤子を求める上位者たち'' |全ての上位者は赤子を失い、そして求めている|三本目のへその緒| 作中で、赤子を求め、その欲求を満たした上位者は3体存在する。 メルゴーの乳母、姿なきオドン、月の魔物 である。欲求を満たす方法は三者三様であるが、上位者の目的はそこにあるとして考える。月の魔物がここに挙げられていることに疑問を持つかもしれないが、それを解く前に、まずメルゴーの乳母と姿なきオドンについて、見ていこう。 --メルゴーの乳母 これは、メンシスの儀式によって呼び出された、メルゴーを求めてやってきたということは前述した。それは、とても単純な方法で、メルゴーとは既に上位者の赤子であり、それを見つけ、ただ庇護することで、目的を達成したと考えられる。 --姿なきオドン この存在は、オドン教会という建物まであるように、どうやら信仰されている上位者のようだ。オドン教会の男は、ここは安全なので、無事な人を見つけたら、ここへ寄こすよう主人公に依頼する。主人公に導かれたNPCは、以降そこに移動することとなる。このオドン教会の男を倒すと、カレル文字、姿なきオドンを落とす。これは彼がオドンの影響化にあった為と考えられる。娼婦アリアンナを助けていると、彼女はゲーム内の時間が進むごとに状態が変化する。赤い月が出た後、苦しみだし、ミコラーシュを倒した時点で、オドン教会で座っていた椅子から居なくなっており、教会の地下に移動している。嘆く彼女のそばには上位者の赤子と思われる存在がおり、これを殺すと、アイテムを落とす。 |全ての上位者は赤子を失い、そして求めている&br;姿なき上位者オドンもまた、その例外ではなく&br;穢れた血が、神秘的な交わりをもたらしたのだろう|三本目のへその緒(アリアンナの赤子)| これらから推測すると、姿なきオドンは、オドン教会の男に影響を与え、そこに集めた人々から、赤子を孕ませられる存在を探していた。そこへカインハーストの穢れた血の流れているアリアンナが来たため、彼女を介して赤子を産ませ、目的を達成したと考えられる。 #br では、月の魔物はどのようにして赤子を求めるという、その欲求を満たしたのか?その前に、「青ざめた血」というキーワードについて記しておこう。 #br -''青ざめた血'' |「青ざめた血」を求めよ。狩りを全うするために|自筆の走り書き|一階病室| 主人公は、ヤーナムで血の医療を受ける前、この走り書きを書いたようで、目覚めてから記憶を失っており、その意味がわからない。宮崎氏のインタビューから一部抜粋して、その意味を考えてみよう。 |「青ざめた血」を2通りに解釈できる| |ひとつは空の色。白痴の蜘蛛を倒し、メンシスの秘密の儀式を暴いたときの空の色|これは「青ざめた血を求めよ」が儀式を暴き、それを止めることを指すという解釈につながる| |(「上位者の血を指すというのは、違いますか?」という質問に対し)確かに、それがもう一つの解釈です。| |「青ざめた血」はとある状態の月から現れるモンスターの別の名前| 氏によれば、「青ざめた血」には少なくとも二通りの意味がある。一つはロマを倒したあとの空の色で、これを求めるということは、その過程で儀式を暴くことになり、最終的にそれを止めなくてはならない、と主人公(プレイヤー)が気づいていく。その最終目的は、ゲーム内の手記からも読み取ることができる。 |メンシスの儀式を止めろ。さもなくば、やがて皆獣となる|隠し街ヤハグルの手記| |忌々しい狩人の悪夢に囚われ、だが逃れたければ&br;獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない|狩人の夢| これらから、一つ目の「青ざめた血」を求めることは、獣狩りの夜を終わらせることと同義である。では、二つ目の意味は何であろうか。 #br とある状態の月から現れるモンスター、というと、赤い月から出現する上位者のことであると想像できる。メルゴーも恐らく赤い月から現れたのだろうが、本編で描写として現れるのは、月の魔物であり、恐らく宮崎氏の指すモンスターとはそのことだろう。他にも再誕者がそれに該当するが、あれは上位者ではないので、そこには含めないこととする。つまり、「青ざめた血」とは、月の魔物を指す言葉でもある。 #br -''月の魔物'' 「青ざめた血」である月の魔物は、主人公やゲールマンが囚われている狩人の夢に現れる上位者だ。 |…私はもう、とっくに、老いた役立たずだよ…| |誰でもいい、解放してください…&br;…私は夢に疲れました。もう、この夜に何も見えないのです…|ゲールマン| 月の魔物は、かなり長い間ゲールマンを狩人の夢に囚えていたようである。ゲールマンは寝言で、自分を老いた役立たずであると言い、夢に疲れ、解放されたがっており、それは、何か月の魔物に課せられた役目があるが、未だ成せていない為である、という趣旨のものだと考えられる。 |あの方は古い狩人、そして狩人の助言者です&br;今はもう曖昧で、お姿が見えることもありませんが…&br;それでも、この夢にいらっしゃるでしょう&br;…それが、あの方のお役目ですから…|人形| この人形のセリフから、その役目とは、夢に依る狩人の助言者となることであるようだ。そして、それは獣狩りの夜を越えても、まだ続いていく。 |また、獣狩りの夜が始まりますね|人形| 前述したが、「遺志を継ぐ者」で月の魔物は主人公を、夢から解放されたゲールマンの代わりとする。それは、彼と同じ役目を主人公に与えるということであり、主人公は狩人の夢に囚えられ、その役目を果たすまで、または夢に依る狩人の手にかかるまで、解放されないのだろう。それは、役目、つまり月の魔物の目的を果たしていないからである。それはいったい何なのか? -''欲求'' 主人公は、「狩りを全う」するために、青ざめた血を求めている。しかし、何故「青ざめた血」そのものである月の魔物を求めることで、上位者となるのだろうか?月の魔物が、狩人の助言者に課した役目、目的、それこそがその謎を解くだろう。月の魔物もまた上位者であり、赤子を求めているのだ。 #br 「幼年期のはじまり」ENDでは、主人公に近づいた月の魔物は、何かを感じ、戦いの構えをとる。その時の主人公は、三本目のへその緒を3つ使っていた。 |かつて学長ウィレームは「思考の瞳」のため、これを求めた&br;脳の内に瞳を抱き、偉大なる上位者の思考を得るために&br;あるいは、人として上位者に伍するために|三本目のへその緒(偽ヨセフカ)| |3本の3本目|教室棟| その行動は、人として上位者になりえる存在として、主人公を位置づけた。そして、その存在を見つけることが、狩人の助言者の役目であったのだ。このENDでのゲールマンはそれを果たしていたと言えるが、結局主人公によって解放された。 #br 月の魔物は、戦いの最中、妙な攻撃をしてくる。主人公の体力を一気に減らし、その後かなりの間動かなくなるのだ。Bloodborneにはリゲインというシステムがあるが、まるで自分を攻撃して、リゲインしろと言わんばかりの行動だ。もちろんこの時リゲインしなくても月の魔物を撃破することはできるが、そういった行動をとる、ということが、月の魔物の目的を示す一端を担っているのだ。このような行動を、自らが倒そうとする相手にするとは思えない。攻撃してこないわけではないが、この行動もあるせいで、それも主人公を試しているように思える。 #br そろそろ月の魔物の目的について結論を語ろう。上位者によって赤子の求め方は違う。月の魔物のやり方はこうであった。 狩人の助言者を操り、夢に依る狩人を獣狩りの夜の度に導き、それを終わらせられる存在にまで成長させる。そして、上位者たりえる存在となったならば、「青ざめた血」である自分を倒させることで、上位者の赤子に変態させる。 これにより、上位者の赤子が生まれ、欲求は満たされ、それこそが目的なのだ。後述するが、それにより人の進化の段階も進んだ。しかし、それではあまりに自己犠牲的に思える。月の魔物はどのような上位者なのだろうか。 |悪夢の上位者とは、いわば感応する精神であり&br;故に呼ぶ者の声に応えることも多い|月のカレル文字| 捨てられた古工房に、三本目のへその緒があり、狩人の夢のそれとそっくりの人形があること、ゲールマンが月の魔物に囚われていることから、ゲールマンが月の魔物を呼んだ、と想像するのは難しくない。そして囚われたのだろう。 |白銀に輝く人形の涙から生じたそれは、静かな励ましに似て&br;継続的に生きる力、HPを回復し続ける効果がある&br;それは制作者が人形に望み、しかし宿らなかったものだろうか|涙の血晶石| 人形をゲールマンが作ったと仮定するなら、彼は人形に生命を吹き込みたかった。それを望んでいた。それは叶わず、古工房で見られるように、人形はかすかに手の指を動かすだけだった。しかし、狩人の夢の人形は、啓蒙があれば動いているのを見ることができ、話もできる。ゲールマンの望みが叶ったといえる。月の魔物を呼んだことは、そこに起因するだろうか。 #br ゲールマンの望みを叶えた月の魔物は、優しい部類の上位者なのかもしれない。だとしても、自らの身を犠牲にするほどとは、上位者たちの「赤子を求める」という欲求は恐ろしいまでに強いのだろう。 #br -''上位者の赤子への変態'' |我ら血によって人となり、人を超え、また人を失う|ウィレーム| |ウィレーム先生は正しい。情けない進化は人の堕落だ|教室棟の手記| |%%%幼年期のはじまり%%%自ら上位者たる赤子となった証。人の進化は、次の幼年期に入ったのだ|トロフィー| 主人公は人間から上位者の赤子に変態した。おそらく偉大なる上位者になったと思われる。ロマと違い、眷属ではない上位者となったことで、人の進化は次の段階へ入った。まさに、ウィレーム達が望んでいたことである。 それは狩人の夢で起こり、今赤い月を介して移動する必要はない。おそらく赤い月を呼び出したり、赤い月によって呼び出されたりという偉大なる上位者の能力、特性は備えているのであろうが、ここでそれを使う必要はない為、赤い月が空にないのは当然ともいえる。 同じように、アメンドーズ、姿なきオドンも、本編中に存在しているが、赤い月の影響を受け、アメンドーズが目視できるようになる、といった現象は起こってはいるものの、やはり彼らに関連する赤い月は現れていないと思われる。 必ずしも上位者がいるところに必ず赤い月が存在し、赤い月があるところに上位者が存在する、というわけではないようだ。しかし、人にとっては赤い月は獣の病蔓延の原因にもなりえる名状しがたい恐ろしいものであり、やはり呼び出していい類のものではないだろう。 #endregion #br *ストーリー説明C [#md5b2603] #region(説明C) この作品は作中でも言及されている通り夢を題材にし、 加えてゲームというコンテンツである以上、遊ばせる前提のうえでの開発の都合が当然ながら存在する。 それは一見すると世界観や物語を読み解く考察を否定しかねない要素ではあるものの、 ''製作者の思想や偏見、解釈を考察する''というメタフィクション含む物語を考察していくと、より違った視点から作品を楽しむことが出来る。 #br #br #br **TRPGを意識した作り [#adf4e8a3] フロムソフトウェアの作品の多くは主人公に個性を付けることがそれほど多くない。 #br #br -''徹底的な主人公=プレイヤーという構図'' この作品の主人公はヤーナムにやってきた経緯以外は個性を示す描写が一切存在せず、 早々に記憶喪失状態となって''何も知らない、何を目的にしたらいいかほぼわからないプレイヤーと同じ状態になる。'' また、キャラクターの容姿や初期能力値を決める際、自らのキャラクターの過去を決めるときの文には、 ''必ず「君」という二人称を使用しており、&color(Red){主人公はプレイヤー自身であることを強く意識させている。};'' #br #br -''遺志(意志)を題材にすること'' ゲーム中では物質としての血として描かれているものの、人形の台詞を筆頭に「血の遺志」とは意志そのものとして扱っており、 ひいては''主人公(プレイヤー)自らの意志であることを語っている。'' 徹底的に伏せられた主人公の個性やプレイヤーが主人公を演じる(ロールプレイング)ことを強く意識させている前提もあいまって、 意志を題材にしたこの作品はTRPGのようにプレイヤーの選択を何よりも尊重している。 その構造から''&color(Red){物語の結末ですらプレイヤーの意志によるものであり続ける。};'' |狩人様。血の遺志を求めてください&br;私がそれを、普く遺志を、あなたの力といたしましょう&br;&br;(人形)| #br #br #br ***プレイヤーに「理由」が求められる [#zf53e2a7] 主人公の没個性な状態や意志を題材にした設定など、ロールプレイングを意識させることに重きを置いているため、 マルチエンディングでありながら''&color(Red){それぞれのエンディングにはプレイヤー側にそのエンディングを選択した理由が求められる。};'' 例えばゲールマンが最後に問いかけた選択肢に関しては''「あなたは何故それを選んだのか?」''という動機がプレイヤーに求められる。 同じようにエンディング「幼年期の始まり」においても''「あなたは何故3本目の臍の緒を使用したのか?」''という動機が、 ゲーム中には描写はされないが''ロールプレイ上での物語では必要になってくる。'' これは裏を返せばネタバレやクリア済み等の既知の状態では再現できない、''&color(Red){純粋な判断しか出来ない初見時だからこそ成立するエンディングであり、};'' ''未取得のアイテム回収や未見エンディングのためといった作業効率からなる選択では物語上成立しないものである。'' |''自ら''上位者たる赤子となった証。&br;&br;(「幼年期の始まり」トロフィー説明文)| #br #br #br ***TRPGとの融合とその歪み [#g5315885] プレイヤーが主人公を演じることについて、TRPGはプレイヤーの自由な発想と判断が許される。 ダイスや能力値、GM(ゲームマスター)による一定のルールに沿って、プレイヤーの意志がその後の展開を左右していく。 一方で家庭用ゲーム機やパソコンで動かす、いわゆるデジタルなゲームにおいては''プレイヤーよりも予め作られたプログラムが優先される。'' いくらプレイヤーの意志で行動したとしても、それがプログラム上に設定されていなかったら実現されない。 ''コンピュータゲームはTRPGにおけるプレイヤーの幅広い発想を表現できる媒体ではない。'' この作品は確かに多くの点でTRPGのようなロールプレイ要素がふんだんに盛り込まれているが、 ''&color(Red){プレイヤーの選択を全て叶えられるほどの媒体で作られておらず、ロールプレイを重視すればするほど、プレイヤーの思惑から乖離してしまう歪みが生じてしまっている。};'' (従来作品の主人公=プレイヤーと大きく違う点は、過剰とも言えるぐらい主人公に個性を持たせていないことと、意志を題材にした物語であることが大きい。) #br #br #br ***プレイヤーの意志を想定したエンディング [#k0c8d1eb] 意志やロールプレイという点を強く意識させる一方で、コンピュータゲームであるが故に、 それぞれのエンディングにおけるプレイヤーの判断が''必ずしも思い通りになっているとは言い難い状態になっている。'' 例えばエンディングは3つ存在するが、その中にはゲールマンが想定したと思われる「悪夢」「狩り」「血」に飲まれた存在へ主人公がなったエンディングが存在しない。 数多のプレイヤーの中には確実に「いつまでも獣を根絶やしにしたい」と考える人もいるはずだが、それに応えるエンディングも存在しない。 そういった歪みの中で描かれた物語の結末は、恐らく''製作者がプレイヤーの意志を事前に想定したものであると考えられる。'' 特に3本目の臍の緒を使用した際のエンディング「幼年期の始まり」は、 アイテムのフレーバーテキストにて「同時に、内に瞳を得るともいう」といった上位者化への示唆をし、そのうえでプレイヤーは使用するという構図になっており、 結果としてゲーム側が''プレイヤーは上位者化したいという意志を表明した''とみなす。 一方でエンディング「意志を継ぐもの」に関しては、プレイヤーがゲールマンに対してどのようなことを考えているかによって分かれる。 事前にゲールマンの悲痛の叫びを聴いていたのであれば、プレイヤーはそこから解放させたいと思うであろうということを想定して描かれたものだと解釈できる。 ''ロールプレイを強調しているからこそ、エンディングの動機すらもプレイヤーに委ねられているが、'' ''事前にプログラムさせておかなくてはならないコンピュータゲームである以上、作り手が事前に想定し用意した、狭い選択肢からなる物語になっていると考えられる。'' #br #br #br #br #br **「夢」が持つ表現法 [#z634c507] この作品における「夢」は、数あるテキストや描写などから、私たちが思い抱く夢とほとんど同じものとして描かれている。 #br #br -''理論的、科学的理屈は軽視される'' 夢は多くの媒体の多くの作品でよく扱われるものであり、 ''&color(Red){非論理的・非科学的な珍妙奇天烈な表現が許されるもの};''として描かれることが多い。 それは私たちが眠りの中で見る夢が非現実的な出来事、意味不明な展開の幻であることを利用したものと言える。 同時に作品を作る側からしてみたら''設定や物語に縛られない、夢だから許される滅茶苦茶な表現があるということでもあり、'' 往々にして夢を題材にした作品は''製作者の思想を表現してみせる''ことが多い。 #br #br -''「幻としての夢」と「理想像としての夢」'' 日常的に使う夢という言葉には、 眠った時に脳が見る光景のことを夢と言えば、自らのまだ見ぬ理想像のことを夢とも言う。 この作品では願い、叶うという理想像としての夢を描きながら、それらを奇天烈な画をもって表現するという幻としての夢を''一緒にして描いている。'' 勿論、作中の舞台が夜であることもあいまって眠り見るものという意味もふんだんに取り入れている。 |同時に、夢の上位者と交信するための触覚でもある&br;&br;そして、これは実際に、彼らを望む悪夢に導いたのだ&br;&br;(メンシスの檻)| #br |悪夢の上位者とは、いわば感応する精神であり&br;故に呼ぶ者の声に応えることも多い&br;&br;(カレル文字「月」)| #br #br -''夢は常に偏見的、偏執的'' 夢占いという言葉があるように、夢は時に本人でも自覚していない心理的状況を見せることがある。 夢は常に''&color(Red){見る者によって変化する映像作品。};'' そこには他者の考えは介入できない完全な自分だけの世界と言え、見る者を体言して見せていると言っても過言ではないもの。 それがどんなに間違った映像でも、見る者そのものを体現しているものである以上は''全てが正しいものに映る。'' #br #br #br ***ゲームという夢と、クリアという夢 [#v3654860] 言わずもがな、この作品は架空のものであり、現実には存在しない。 先述したように夢には理想像という意味もあり、同時に幻という意味もあり、この作品ではそれを同時に描いている節があるが、 ''エンディングのひとつ「ヤーナムの夜明け」の描写からして、明らかに全ての出来事が夢の中の幻であったかのように描かれている。'' それはこのゲームがTRPGのようにプレイヤーのロールプレイを意識させる構造もあいまって、 このゲームでの体験そのものを夢とするメタフィクション的要素を意図して取り入れられているからと考えられる。 すなわち、この作品を購入し遊び、ゲームクリアを目指すというユーザーの心理そのものが''&color(Red){夢を体験し、目指すという行為そのものを表している};''ということ。 主人公の当初の目的とされる「狩りを全うするために」というのも、 ''獣狩りを題材にしたこの作品そのものを全うするという意味と同じものとして扱っていると思われる。'' #br #br #br ***クリエイターたちの夢の形 [#n3ada7b1] プレイヤーという提供される側という意味では、作品内での夢と現実にゲームを遊ぶプレイヤーの行為そのものが密接に繋がっていると言えるが、 作品を提供する側からすれば''作品の完成を目指し、成し遂げた理想の形がこのゲームであるという解釈もできる。'' 言うなればブラッドボーンという作品はフロムソフトウェア、ひいては宮崎英高氏の夢の形そのものでもあるということ。 勿論多くのクリエイターたちによって作られたものであり、そしてその大勢があるひとつの目的(作品の完成)に向かって成し遂げたものである。 ''夢を題材にしたことで、結果として遊ぶ側、遊びを提供する側という両者の立場を表現してみせたものになったと言える。'' #br #br #br #br **メタフィクションとしてのゲーム [#l122367f] TRPG的要素に夢という概念をも盛り込んだ今作は、ある種のRPG論を打ち出してきたように読み取ることもできる。 #br #br -''夜明けが意味するもの'' 主人公をプレイヤーが演じる中で、エンディング「ヤーナムの夜明け」とは、物語冒頭から示されていた「狩りを全うする」という言葉に沿った正真正銘のエンディングとも言える。 なぜなら他二種のエンディングがプレイヤーの判断によって枝分かれしたものであるのに対し、こちらは最初から明示されているため。 このエンディングを迎えた後、ヤーナムは獣狩りの終わりを告げる朝を迎えることになるが、 それは''&color(Red){獣狩りをメインに据えたこのゲームそのものの終わり(ゲームクリア)と同じ意味を持ち、};'' 夢という幻から解放されて(設定的には)現実のヤーナムで目を覚ますという&color(Red){''ゲームという幻から現実へと帰るプレイヤーそのものを表現していると言える。''}; #br #br #br ***ゲームを体験することで得られるもの [#r39b8a62] 今作でここまでロールプレイと、意志や夢という要素を持ち出してまで表現したかったのは、 恐らく''ゲームを遊ぶという行為そのものを今一度定義しなおしたかった''と考えられる。 エンディング「ヤーナムの夜明け」の描写のように、確かにゲームそのものは幻であり、いずれは現実へと戻る構造になっているが、 その時同時に我々プレイヤーは''なにかしらの成長を遂げている。'' 夢であったにも関わらず、現実のヤーナムで目覚めた主人公がゲーム開始時の状態ではなく、 夢の中で体験し成長した状態のままでいることは、''&color(Red){ゲームを通じて成長を遂げたプレイヤーそのものを体現していると言ってもいい。};'' それはこの作品が従来の宮崎英高作品同様''高難易度とそれを乗り越えることを主軸にしたものだからこそ''だと言える。 あるいは製作者がそう信じ、そうなるようにゲームを作っているという思想を持っているからとも。 まさしくそれは、見る者、見せる者による思想を映像化させる夢と同じように。 一方で、こうしたメタフィクションとしてこの作品を考えた時、プレイヤーが最終的に獣化ないしは狩りに酔いしれてしまうエンディングは、 先述したゲームを通じたプレイヤーの成長とは反対の表現にもなってしまうため、いわゆるバッドエンドが存在しないと考えられる。 #endregion #br *コメント [#yd0d34b3] #pcomment(,reply,10) &color(Red){''&size(20){※できるだけ改行は控えましょう。(不必要にEnterで行変えない!)};''}; &color(Red){''&size(20){※ツリー化を心がけましょう。(レス書き込む前に(&attachref(画像置場/radio.jpg,nolink,ラジオボタン);)をチェック!)};''}; #br